攻略アドバイスの2回目、京都マラソン当日まで4ヶ月を切りました。今回もフルマラソンに取り組むランナーにとって必要な基礎的な知識を説明していきます。
毎年マラソンレースを目指す人は、日頃から、例えば月間走行距離は200km、1週間に1回は20km以上走る日をつくる、月1、2回はイベントや練習会に参加する、など練習でも目標をしっかり決めて取り組んでいる人も多いことでしょう。
これから初フルマラソンに挑む人は、まずはランニングを無理なく習慣化することが第一で、週に3回走れるようになれば、その後徐々に走る時間を延ばしていき、レースに向けた下準備を整えていきます。
そして、レースのおよそ3ヶ月前から、レース対策プログラムとしての本準備期間となります。トレーニング内容は「今までより走る回数や距離を増やす」、「レースに近い距離を目標ペースを設定して走り切る」、「ハーフマラソンに出場する」など様々ですが走りこみの開始です。
このように、本格的な準備を数か月積み重ね、レース当日には体力が最も高まった状態で、かつカラダの不調や脚の痛みや違和感がなくレースに挑めれば、掲げたレース目標を達成できる可能性は高まります。
京都マラソンは2月18日なので、およそ3ヶ月前の11月中旬から、レース対策プログラムを開始するのが適切でしょう。2ヶ月前、1ヶ月前からとなると体力を高めるには時間不足ですし、また今まで1回の練習で10kmしか走ったことがないのにいきなり20km以上走るとランニング障害の発生リスクも高まります。
京都マラソンに向けて、多くのランナーに当てはまる3ヶ月前の基本的な進め方は、次のようになります。
11月は、ゆっくりでも頻度と距離を高める、量の走りこみ。
12月は、距離に応じてペースも変える、量+強度の走りこみ。
1月は、ロングペース走(20-30km走)のタイム結果と余裕度から、走力の確認。
2月は、走行距離を減らして疲れを取り除く、仕上げ。
以上を前提として、ここからは、12月の練習の内容にもつながる、量と強度の関係、さらにペースに対する感覚と実際のペース(1km何分何秒)の関係の理解を深めていきましょう。
ウォーキング運動では、ペースアップと思っても、より脚を速く回すこと(競歩のフォーム)は大変で技術的にも難しく、ペースはいつもほぼ一定で、呼吸の変化はあまり感じません。
しかしランニングは“跳ねる運動”ですので、少し脚に力を入れて大きく蹴り、カラダを大きく動かせばスッとペースアップできます。走れるペース幅は人により異なりますが、ある人が時速7~15kmの幅で走れるなら、ペースにより呼吸の乱れやそのペースの楽さ、辛さの感じ方が大きく変化します。
ランニングでのペースの感じ方を「ペース感覚」といいます。フルマラソン完走を目指すレベルから3時間を切るレベルのランナーまで、ペース感覚は大きく違い、次の5つゾーン(領域)に分けられます。
ゾーンI「かなりラク」
呼吸に全く意識なし。敢えてゆっくりペースを落として走っている、油断するとペースアップしてしまう。
練習では、LSDに相当します。
ゾーンII「ラク」
呼吸は自然。楽さを感じて走っており、いつでもペースアップできる余裕がある。
練習では、週に数回30~60分を走るジョグレベル、25km以上走るロングペース走に相当します。
ゾーンIII「快適」
呼吸は少し弾む。でも快適さを感じながら走っている。気を抜くとペースが落ちる。
フルマラソンの平均ペースです。練習では15~25km走れるレースぺース走に相当します。
ゾーンIV「ややキツい」
呼吸は少し乱れる。ややキツさを感じて走っている、集中しないとペースが維持できない。
ハーフマラソンの平均ペースに相当します。練習では、10~15km走れるハイペース走に相当します。
ゾーンV「キツい」
呼吸が速くなる。ゴールを懸命に目指して頑張ってペースを維持している。
10kmレースの平均ペースに相当します。練習では、急走期(速いペース)と緩走期(ゆっくりペース)を繰り返すインターバル走の急走期のペースに相当します。
京都マラソンでの目標ゴールタイム別に、ゾーン分けした1kmあたりにペース(分:秒)と相当する練習、その距離を表にまとめています。
グリーンのゾーンⅢ「快適」のタイムを見てください。これはフルマラソンレースの目標ゴールタイムを42.195kmで割った値になります。例えば4時間が目標の人なら、4時間÷42.195kmで5分41秒になります。すなわちこの5分41秒をスタートからゴールまで持続できれば目標達成となります。
目標のレースペースだからと言ってゾーンⅢのレースペースのみで練習を積むランナーがいます。15km、20kmまでなら練習でもこのペースを持続できますが、その後大きくペースダウンし30kmまで走れず足を止めてしまいがちです。
レースと練習は別物です。練習はまだレースへの準備段階、走力向上中。またレースと比べれば集中できず頑張り度もあがりません。よってゾーンⅢより遅い、ブルーのゾーンII「ラク」なペースで「ロングペース走」25~30kmを目標に、フルマラソンに耐えうる強い脚を徐々に作っていくのです。
グレーのゾーンⅠ「かなりラク」なペースでの練習はLong Slow Distance 「LSD」と言い、できるだけ長い距離・時間をできるだけゆっくり走る練習です。水分・栄養補給の休憩も入れながら3時間以上走っていきます。目標ゴールタイム4時間30分以内の人は7分15秒から7分30秒のペースになります。目標ゴールタイム5時間、完走の人は、ゾーンⅡの「ロングペース走」を25km以上走ると3時間を超えるので、特に「LSD」練習を別に組み込む必要はありません。
ホワイトのゾーンは、ⅠとⅡ間のペースで最も頻度高く行う練習「ジョグ」です。どのレベルのランナーも週に2、3回はこの領域のペースで取り組みます。30~60分程度の無理のない時間と距離を無理のないペースで余裕を感じながら行います。例えばゴール4時間目標の人は、およそ1キロ6分から7分の間のペースになります。
京都マラソン2018に向けて4時間半以内のゴール目標の人
●これから11月中旬まで(~レース3ヶ月前)
・ホワイトゾーンの「ジョグ」を週に2、3回以上継続する
・ゾーンⅠの「LSD」を計2、3回取り組む
●11月中旬から1月末まで(~レース3週間前)
「ジョグ」にプラスして
・ゾーンⅡの「ロングペース走」を1~2週間に1回、平均ペースを段階的に上げながら行う。※
・ゾーンⅢ、Ⅳ、Ⅴのいずれかの練習を週に1、2回行う
※については、次回の第3回攻略アドバイス(11月27日(月)公開予定)で詳しく説明します!
京都マラソン2018に向けて5時間、完走ゴールが目標の人
●これから11月中旬まで(~レース3ヶ月前)
・1キロあたり7分15秒から8分00秒のペースより速くならない「ジョグ」を週に2、3回、習慣化する。
●11月中旬から1月末まで(~レース3週間前)
「ジョグ」にプラスして
・「ジョグ」のペースを変えずに距離を伸ばし、年末までには20km程度を、1月末までには25kmまたは3時間走ることを目標とする(次回の攻略アドバイスで詳しく説明します)。
・ホワイトゾーンの「ジョグ」のうち週1回は、途中からペースを上げ、「ややキツい」と感じるゾーンⅣペースまで上げる「ビルドアップ走」で心肺機能の向上も目指す。
・ゾーンⅤの練習はペースのアップとともに、着地衝撃が大きくなり、関節への負担が増すので必ずしも行う必要はありません。
より詳しい呼吸やペース感覚の変化や練習法については、
2017大会アドバイスの「3か月プログラムの開始 〜「カベ」を破るために〜」に記載しています。
ところで、ペースは走りながら時計でチェックしないと分かりません。1または2、3kmの正確な目印があるコースで、ストップウォッチのラップタイム(区切りのタイム)を常に確認する必要があります。
走歴が浅い人は、頑張ろうという気持ちが強く、走り始めはペースが上がりがちです。初めの10分は余裕があるので6分30秒でも「ラク」に感じていても、30分を過ぎれば急に「ツラく」なりペースダウン。結局初期目標の60分を一定ペースで走れないで終わってしまうことがよくあります。走りだす前に、今日は7分30秒前後のペースで60分を走ると定め、途中途中でそのペースより速くなりすぎていないかの確認が必要です。
いつも走っているコースの合計距離や1kmポイントを知るために、是非WEBの検索ページで「ランニング距離」と入力して、便利なツールを見つけてください。また、スマートフォンのアプリやGPS機能付きのランニングウォッチでは、走行距離の他、今走っているペースも瞬時に示してくれますので、活用できます。
今回のアドバイスを理解して練習に取り組むと、量と強度に応じた最適な走練習を、無理無駄なく賢く、さらに安全に取り組むことができるようになります。
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※トレーニング実践編は、今回の攻略アドバイスの内容を実際に運動しながら体験していただくコーナーです。松井祥文コーチから直接指導を受けたい方は気軽にお申し込みください。皆さん走力アップしてフルマラソンへチャレンジしましょう!
【第2回 11月25日(土)14:00〜16:30 定員50名】
「第3回:~もっとも大事な走練習~「走りこみ」の開始、そして「走りこみ」を続ける へ続く[11月27日(月)公開予定]