京都マラソンのレース当日まで40日となりました。そろそろ「走りこみ期の終盤」と「仕上期・調整期」を意識した練習に切り替えていきましょう。レース当日までに走力がどこまで高まっているかを確認して、必要に応じてレース目標を再設定したり、京都マラソン特有のコース対策をしていくことを皆さんにアドバイスしたいと思います。
1.「走りこみ期の終盤」の練習法
1月末までは「走りこみ期の終盤」、強化の練習が続きます。
京都マラソンが初フルマラソンの人
第4回攻略アドバイスでおススメした、年末年始に3時間走または最長30km走のロングペース走ができた人は、2~3週間空けて、もう一度行います。
<ポイント>
・今回は、前回走れた平均ペースでスタートします。例えば前回3時間走で24km走れた人は、平均1キロペース7分30秒なので、今回はその7分30秒のペースでスタートしてください。
・前半は、前回のロングペース走の疲労が抜けていて、脚の痛みや張りなどの違和感がないかを慎重に確認しましょう。
・後半(1時間30分または15km経過後)は、余裕が十分であればペースを上げても構いません。
・2回目のロングペース走の平均ペースを計算してみてください。そのペースをレース日のスタートペースに設定しましょう。
毎年数回フルマラソンに出る人
年末年始の走り込みが終われば、練習は量より質が重要です。
第3回攻略アドバイスで「ロングペース走のステップアップ」ステップ2の終盤~ステップ3の仕上げをもう一度ご覧いただき、参考にしてください。
<ポイント>
・レース日の3~4週間前の最後のロングペース走は、距離が正確にわかっているコース、周回コース、起伏の少ない走環境が整った条件で行います。最終のロングペース走でゴールした平均ペースやこれまでの同様の記録と比べながら、京都マラソンの目標タイムとペースを設定しましょう。
2.「仕上期・調整期」の練習法
1月下旬からレース当日までの「仕上期・調整期」は、レース当日に向けたカラダとココロの整え方が重要です。
●カラダの調子を上げていく
カラダの調子を上げるためには、練習量を減らして疲労を取り除くことが大切です。
初フルマラソンの人
・週当たりの練習回数を落とす。
走りこみ期で週3回走っていた人は、2週間前には10~15kmを週2回、レースのある週は本番3~4日前に8~12kmを1回のみ、フルマラソンレースのペースで30~60分間走ります。フルマラソンペースですので、その距離では失速しないペースです。
<ポイント>
・膝や足に痛みや違和感がある人は、無理して走らないでください!
・ただし、走る以外の患部に負担をかけない運動(坂道歩き、自転車漕ぎ、水泳など)を行い、体力の低下をできるだけ防ぎましょう。脚が少し疲れ、少し息が弾み、かつ患部の痛みや違和感がない動作で行うことが重要です。
・レース当日は、走練習が十分にできていなかった分、完走に向けての体力面の不安があると思います。それよりもスタートラインに立った時に痛みや違和感がないという安心感が、ゴールへ脚を回し続ける原動力になります。
定期的にフルマラソンレースに出ている人
・筋持久力を維持しながら疲労を完全に取り除く。
2週間前に20km程度、1週間前に10kmを、目標のレースペースで走りましょう。
週に4回以上継続して走ってきた人は、そのうち1回を目標レースペースより速いペースのハイペース走で30~60分間行って、心肺持久力も維持します。
<ポイント>
過去のレースで予定どおり走れた人は、その時のパターンを繰り返すことをオススメします。
●ココロの調子を落ちつかせる
ココロの調子を整えるには、レースに向けた目標に幅を持たせることをオススメします。レースに向かう気持ちに余裕が生まれ、ココロを落ちつかせることができます。
私は、毎回のフルマラソンレース3日前に、3つの目標ライン(タイム)を設定します。
・期待値大で願望に近い「ストレッチライン」
・このタイムを切れればうれしい!万歳できる「ハッピーライン」
・予定のプランが崩れてもこのタイムは下回りたくない「ボトムライン」
複数の目標を設定していると、レース前の緊張感や当日の体調や調子、レース中のトイレなどのアクシデント、気象条件のマイナス要素を差し引いても、目標を切り替えることができるので、頑張る気持ちが切れない走りが最後まで続きます。
●まとめ
仕上げ・調整は、繊細で共通の正解がないものですし、経験の積み重ねも必要なものです。今回の練習内容と練習でのペース感覚をしっかり記録しておき、今後に生かせるようにもしておきましょう。
目標を繰り返しクリアし、成功体験を積み重ねていくこと、それが練習のモチベーションの高まりや、次のレースの意欲につながっていきます。自分自身が成功と思える目標を複数持って、ココロの調子を落ち着かせてレース当日を迎えましょう。
3.レースでのアクシデントと対処法を考える
長いフルマラソンレースでは、様々なアクシデントが起こる可能性が誰にでもあります。アクシンデントを事前に把握して対策を講じ、対処法が分かっていると、ペースダウンやロスを最小限にとどめ、安全な走りにつなげることができます。
私が見たこと、自分の経験したことからのアクシデントと対処法をアドバイスしますので、皆さんも自分の準備状況、体調、走力に応じたアクシンデント対策を事前に考えておきましょう。
【アクシデントその1】時間制限関門
前回の京都マラソン2017では、私は最後尾で走っていたところ、スタート後5kmすぎまでの各トイレに長い列ができていました。その先の第1関門(6.1km)の閉鎖時刻を認識せずに、このタイムロスで、残念ながら関門にかかってしまった人もいたようです。
<対処法>
参加案内(1月下旬発送)には、時間制限関門やトイレの配置が載っています。該当の箇所が切り取れるようになっていますので、ぜひ携帯することをオススメします。
【アクシデントその2】足が攣る
レース中にふくらはぎや太ももの裏がケイレンし、攣ってしまうことは、走歴やレース経験に関係なく起こる可能性があります。ピクピクと軽い違和感に気付いても、我慢してペースを維持して頑張っていると、完全に攣ってしまって立ち止まる状況に陥ってしまいます。
<対処法>
ケイレンには前兆があるので、攣りかけたらペースダウンし、急には脚の動きを変えずに落ち着いてゆっくり走りながら、その攣りの波が去るのを待ちましょう。
【アクシデントその3】気温の低さ
サブ3.5 やサブ3を目指す人は、Tシャツやランニングシャツ1枚の薄着で走る人も多くなります。雨や雪、風のある日だと、前半のオーバーペースで失速して30km以降歩くようなペースになった場合は、急に体温が低下してしまい、疲労も加わって低体温症になる恐れもあります。
<対処法>
気象状況と自分のペース配分を慎重に考えること、軽量防寒ウエアを携帯することで防ぐことができます。
【アクシデントその4】オーバーペース
レースはハレ舞台です。マラソンはレースの雰囲気や緊張感がレース前半ではペースアップに、後半ではペース維持にプラスに働き、練習より速く走れることがあります。
しかし、そのペースアップやペース維持で頑張り続けた分、30~35km以降に失速することもよくあることです。
<対処法>
レースを楽しむ一方で、冷静にペース配分を維持することを意識しましょう。
4.京都マラソンのコース攻略アドバイス
フルマラソンは、42.195km先のゴールを目指すとてもハードなスポーツですので、テクニックだけでは対処はできません。しっかりとした土台、つまり筋持久力と心肺持久力が十分に高まっていないと思うような結果が得られないのです。土台づくりができれば、京都マラソンだけではなく、どんなフルマラソンでもゴールできるのです。
しっかりと土台を築いた上でのテクニックはプラスに働きます。2月の京都市内の気象条件、京都マラソンのコースを考慮したうえで、準備を万全にしておくに越したことはありません。私からの最後のアドバイスは、京都マラソン2018に向けての攻略アドバイスのテクニック編です。
「気象対策は抜かりなく」
当日の気象予報を数日前からしっかり確認しましょう。朝の冷え込みがどの程度か、その冷え込みは日中も続くのか、雨、雪の可能性は全くないのか、少しでもあるのか。その予想によって、ウエアを考え、冷えや濡れ対策、あるいは逆に日差し対策が必要な場合もあります。
「前半の上りは決して頑張らない!」
8kmあたりの広沢池を過ぎると上りが始まります。細かな下りもありますが、きぬかけの路の13km手前までは上ります。スタートして5kmぐらいからはペースも安定するので、この上りに差し掛かってもペースを維持しようと頑張り度を上げてしまいますが、これは後半のことを考えるとエネルギーロスです。上りは息を上げずペースダウンしても、下りで歩幅を狭くして下りればすぐに上りの分を取り戻せます。
「最北の西賀茂橋~最南の京都市役所は一定のリズムで」
コースの最北の第4関門地点西賀茂橋西詰18.4km地点から最南の京都市役所の35.1km地点までコースは下り基調です。この区間の約17kmの内容でゴールタイムが大きく変わってきます。これまでのロングペース走練習を思い出し、一定のリズムで安定したペースで走ることを目指します。
「最終折り返しの40km手前までの上りは気持ちの強さが重要」
京都市役所を過ぎ、コースはまた北に向かいます。40km手前の今出川通の折返しまでのこの5kmは気持ちの強さがとても重要です。気持ちでも頑張るためには、その前でしっかり給水、必要なら給食でエネルギーを取りカラダに最後のムチを入れます。そして周りからの声援を自分の力にしていきましょう。声援の方向にうなづいたり小さくガッツポースすれば、さらに自分に応援してもらえます。応援に来られるご家族、知り合いがいれば、この区間でもっとも熱い励ましをお願いしておきましょう。
5ヶ月にわたってお届けしてきました攻略アドバイスは、これで完了です。
皆さんが引き続き京都マラソンへの準備を進められ、最高のカラダとココロの状態でスタートラインを切れることを願っています。
「トレーニング実践編」も次回が最終回です。京都マラソンのスタート会場である西京極総合運動公園の陸上競技場内で行います。本番さながらの環境で、レース2週間前のご自身の走力を確認できます。詳しい内容とお申し込みはこちら(外部ページにつながります)
※トレーニング実践編では、今回の攻略アドバイスの内容を実際に運動しながら体験していただきます。松井祥文コーチの指導とペースメイクのもと、同じく京都マラソンのゴールを目指すランナーとともに走力アップを目指しましょう!
【第5回 2月3日(土)14:00〜16:30 定員80名】