【攻略アドバイス】第3回:~もっとも大事な走練習~「走りこみ」の開始 そして「走りこみ」を続ける

京都マラソンまで約3ヶ月前になりました。朝晩の気温もぐっと下がり、日中の日差しの負担感もなくなってきました。いよいよマラソン練習には最適なシーズンです。さあ、レース日に向けての本準備、走りこみの開始です。

1. 年間の期分けについて

健康づくりのための運動は、年間を通じて一定の頻度で一定の時間をかけ、無理のない強度で安定的に行うことが安全に無理なく長く続けるためのポイントです。

競うスポーツになれば、試合で相手に勝つ、レースでより良い記録をだすためには、練習を積み上げ、試合・レース日に体力と気持ちのピークをもっていくことが必要です。フルマラソンを目指す市民ランナーも1年間を1サイクルとして、時期によって練習内容を変える「期分け」を取り入れましょう。段階的に練習量を積み重ね、メリハリをつけていくと、カラダはそれらを新鮮な刺激と受け止め、走力が向上していきます。

<図1>「期分け」と京都マラソンのレース日までの走力向上のイメージ


図1は、「期分け」と京都マラソンのレース日までの走力向上のイメージ(黒実線)です。練習量(青点線)と対比して確認していきましょう。

京都マラソンが初フルマラソンの人
京都マラソンが初フルマラソンの人は、夏のエントリー時期が「ココロの準備期」にあたります。秋の当選発表の時期から「カラダの習慣期」に移り、週に2、3回以上の走練習を実施できたと思います。そして今の時期からが「走りこみ期」になります。徐々に練習量を増やしていく「基礎的な走りこみ期」を12月末まで、25~30km走を取り入れながら自分の走力を確認する「本格的な走りこみ期」が1月末までです。2月に入れば「仕上期・調整期」で京都マラソンに向け、練習量を減らし脚の疲労のリフレッシュとココロの不安を取り除いていきます。

毎年数回フルマラソンに出る人
毎年数回フルマラソンに出る人は、夏から走りこみを開始し、この11月に今シーズンの最初にフルマラソンを走った人も少なくないでしょう。フルマラソン後1~2週間の今の時期は、脚や内臓の疲労を回復させ、また今までの練習の成果とレースの結果を分析し、気持ちも新たに京都マラソンへの目標を再設定する「回復期・再開期」です。そして12月中旬からは、前レースまでの練習量を維持しつつ、ペースレベルを引きあげていく「本格的な走りこみ期」の第2弾です。レース前1ヶ月を切れば30km走やハーフマラソンで走力を確認しつつ練習量を落とす「仕上期・調整期」で京都マラソンに向けての準備が整います。

2. 「走りこみ」とは

走りこみ期は、集中的に今までより練習の負荷を高める強化期間です。マラソンの負荷とは、量と強度です。走りこみには2つのアプローチがあります。

① 量 ⇒ 距離を増やすこと
例えばラクなジョグ、週2回を週3、4回へ頻度を増やす。1回の距離を5kmから8kmに増やす。さらに週末にロングペース走(3を参照)を開始し、距離も20kmから30kmに少しずつ増やす。その頻度も2週間に1度から1週間に一度にすると、週、月あたりに走行距離が増えます。
連休や年末年始に走回数を増やし、練習の密度を上げることも効果があります。

② 強度 ⇒ ペースを上げること、起伏を走ること
同じ距離でもペースを上げると負荷が高まります。レースに出ることや起伏のあるコースを走ることも強度アップになります。ただし、過度なペースアップ、オーバーペースは今までの走行距離をこなせなくなるので、練習距離に応じた持続できるペース感覚を磨くことも大切です。

3. ロングペース走とは

フルマラソンレースを目指す人は、長い距離を走る練習がもっとも重要かつ必要であると理解されていると思います。

京都マラソンが初フルマラソンの人
京都マラソンが初フルマラソンの人は、まずは走り続けられる距離・時間を伸ばしていくことが練習での目標となります。11月下旬から12月末までの「基礎的な走りこみ期」では、毎週数回、習慣的に走る「ジョグ」にプラスして、「ジョグ」のペースを変えずに距離を伸ばす「ロングペース走」を2週間に一度行っていきます。12月末までに3回、15km→17.5 km→20kmと段階的に距離が延びれば満点です。ペースを気にする必要はまだありません。歩かず走り続けることが目標です。

毎年数回フルマラソンに出る人
毎年数回フルマラソンに出る人 、今シーズン既にフルマラソンを走り、京都マラソンでは5時間をゴール目標にする人は、「本格的な走りこみ期(Ⅱ)」の中で12月末までは「ロングペース走」を2週間に一度行っていきます。12月末までに20~25km走を3回実施することが目標です。同様にペースを気にする必要ままだありません。歩かず走り続けることが目標です。
4時間半以内のゴール目標の人は、1月中旬まで続く「本格的な走りこみ期(Ⅱ)」を通じて、 「ロングペース走」を1~2週間に1回、平均ペースを段階的に上げながら行っていきます。 次の「ステップアップ法」で具体的にアドバイスします。

4. ロングペース走のステップアップ法

「レースまでに、練習で30kmを走っておきたい!」と皆さんよく言われます。しかし、走歴が深まり、より良いタイムを求めるためには、単発ではなく数多くを行う、更に回を重ねるごとにペースを段階的に上げていくことがポイントです。このポイントを押さえて練習すると、レースに向けて筋持久力が確実にアップしていきます。



図2は、サブ4を目指す人の10週間のロングペース走のステップアップの例です。

ステップ1)LSDもしくは最低速で30kmを走りきる。 1週目
ステップ2)25~30km走を繰り返し、段階的にペースを上げていく。 2~8週目
ステップ3)30km走やレース・練習会を利用し、目標レースペースで余裕度を最終確認。 10週目
6週目、9週目の週は目標ペースを設定しない15~20kmのロングジョグで疲労の蓄積を防ぎ、リフレッシュします。

ステップ2)、3)については、ペースメーカーが導いてくれるレースや練習会でその時点での走力やペースの余裕度を確認するのも良いでしょう。
平成30年1月13日(土) に開催される大阪市淀川区の「大阪30K」で、私はペースランナーとして、またレース後に会場で「京都マラソン コース攻略 走力別アドバイス」講座を行います。
エントリーなど詳しい内容はこちらから。



一人で練習を行う場合、最初から最後まで一定ペースで走り切ることは精神的にも辛く感じます。図3の7週目のように、前回5週目の平均ペース(6:00-6:05/km)と同じ程度で走り始め、後半は2段階(5:45~5:50/km、5:30~5:35/km)でペースを上げ、今回の平均ペースが前回を上回るように走るロングビルドアップ走として行うのも良いでしょう。

5. 30km走やロングペース走練習以外の走りこみ

定期的にロングペース走ができない場合は、代替方法もあります。ただし、ストレッチやマッサージなど前後の予防や回復にケアがより必要です。

A) セット練習を行う
2日間で合計30kmを目標とする。
例:土曜日はゾーンIII「快適」ペースで20km + 日曜日にゾーンIV「ややキツい」ペースで10km
※ゾーンについては、第2回を参照してください。

B) レースを利用する
ハーフマラソンレースのゴール後、その帰路でジョグのペースで10km。

C) 連休や年末年始を利用して集約的に行う
2日間続けてのロングペース走や1日2回の練習

6. ケガを予防する

初マラソンを目指して最近走り始めた人でも、ランニングが習慣化でき、この時期から走行距離を伸ばせれば、体力、走力アップは実感できます。走歴が長い人でも、今まで定期実施してこなかったロングペース走を積み重ねていけば、同様に効果が実感できます。
しかし、距離が増し、ペースが上がれば、脚への負担も高まり、ケガ(ランニング障害)が起こるリスクもアップしていきます。前回からの繰り返しになりますが、スポーツドクターの原邦夫先生の予防アドバイスを参考にして、ランニング障害について知り、「2016大会攻略アドバイス 第3回(初級編)」のビデオ内のストレッチを習慣化し、ケガを予防していきましょう。

走りこみの具体的な方法と、それを続けることが、この1ヶ月の重要な練習ポイントと理解できたと思います。この走りこみが京都マラソンのゴールに必ずつながっていきます! 頑張りましょう!!


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※トレーニング実践編は、今回の攻略アドバイスの内容を実際に運動しながら体験していただくコーナーです。12月と1月は、走りこみの練習を行います。松井祥文コーチの指導とペースメイクのもと、同じく京都マラソンのゴールを目指すランナーとともに走力アップを目指しましょう!
【第3回 12月16日(土)14:00〜16:30 定員50名】